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サンタクルスがやって来る ~町に、そして地上波に~

2012年12月16日

気をつけろ、奴はずっとお前を見ている

泣くな、しかめっ面をするな

何故かって? サンタクロースがやってくるからさ

そんな恐ろしい歌詞が展開する(大げさ)名曲「Santa Claus Is Coming To Town」であるが、明日現地時間15日、一足早いサンタがロサンゼルスにやってくる。ただし立派な髭を蓄えて笑顔とともにやって来るのは肥満老人サンタクロースではなく若きIBFバンタム級王者レオ・サンタクルスだ。

まずもって驚きなのはこれがサンタクルス三度目の防衛戦、そう、今年6月に王座を獲得した新米王者の「三度目の」防衛戦だということだろう。対抗王者山中慎介が去年11月にタイトル奪取してから二度目の防衛をこなしたばかりということからしてもこのペースは速すぎる。しかしこの試合が注目を集める本当の理由は他にある。これを中継するのがCBS、つまり全米3大地上波ネットワークの一角だということだ。(放送は米東部時間の午後4時半から。日本時間では午前6時半)

アメリカのあらゆるボクシング関係者にとって、ボクシングの地上波復帰はまさに念願だった。かつてモハメド・アリはじめ「黄金時代」の多くのボクサーが地上波テレビで全米のリビングに興奮を届けた。当時ボクシングは間違いなく全米の超メジャースポーツだった。時代は移りケーブルテレビチャンネルがボクサーにとって第二のリングとなる。それはPPV収入に代表される新たな、莫大な富を四角いジャングルにもたらしたが、代償として誰もが知るような「国民的英雄」は滅多に生まれることがなくなった。

アメリカボクシングの復権にはファン層の拡大、競技人口の増加が欠かせない。移り気な大衆を、そして将来のボクサーの卵たる子どもたちをスウィート・サイエンスに惹きつけるには何が必要か? 答えは無数に考えられるが、一つははっきりしている。誰もがテレビで気軽に試合を見れるようにすること。つまりは地上波放送の復活だ。言うまでもなくアメリカは世界一の大市場でありボクシング界の中心。ここが上り調子になればそれはこのスポーツの世界全てに波及する。だから僕もこんな記事を書いている。

一応、アメリカにおいて有料チャンネルというのは日本におけるそれより遥かにメジャーな存在だ。SHOWTIMEは2100万世帯以上、HBOは2900万世帯以上の視聴者を抱える。日本のWOWOWが250万世帯かそこらであることと比べれば人口の違いを差し引いても格段の差があるわけで、なるほど日本ではパッキャオですら無名なのもうなずける。しかしそうは言っても有料チャンネルは有料チャンネル。CBSが一億世帯を超える視聴可能世帯を持つのとは比較にならない(ちなみにCBSはSHOWTIMEの親会社)。まして最もボクサーに憧れやすい貧困家庭の人々は有料チャンネルなど契約できないのだから。

オスカー・デラホーヤはこのことを強く意識していた。彼は事あるごとに地上波ボクシングの復活を公約として掲げていた。彼の力を持ってしてもそれは一朝一夕で叶う仕事ではなかったが、明日ついに現実のものになる。しかも話はこれで終わらない。一週間後、もう一つの全米地上波局NBCがトマス・アダメクvsスティーブ・カニンガムのヘビー級戦を放送する。こちらのプロモーターは中堅のメインイベンツ社だ。メインイベンツは今年1月からNBC傘下のケーブル局であるNBCスポーツネットワークと契約を結び、定期的にテレビファイト興行を打っている。その視聴率と評判の良さに気を良くした親会社NBCが更に大きなチャンスを与えてくれた格好だ。

かつてボクシングが地上波が消えたのは必ずしも視聴率が悪かったからではない。むしろ視聴率は良い方だったという。しかしどこの国でもそうだが、スポンサーにCM枠を売って稼ぐ地上波の経営システムはボクシングとの相性が良いとは言えない。もし試合が序盤で終わってしまったらもはや誰も見ることのないCMが虚しく全国の電波塔から発信されるだけだからだ。それにプラスして当時のプロモーターが、そしてボクサー自身が短期的により大きく稼げるケーブル局のビッグオファーを好んだという一面もある。CBSからボクシングが去って15年、NBCからは7年経ってこの業界はようやくその選択の大きなコストを思い知ることになった。愚痴を言っても始まらない。全ては1つずつ実績を積み上げていくことから始まる。

それにしても地上波ボクシングの復活第一弾がアフリカ系のヘビー級ではなくメキシカンの軽量級だというのは時代の変化を否応なく感じさせる。今やアメリカボクシングの中心は選手層においてもファン層においてもラティーノだということだ。カニンガムは黒人だがこちらの興行の主役はむしろアダメクであり、番組開始が午後4時なのはアダメクの母国ポーランドのゴールデンタイムに試合時間を合わせて高額の放映権料を得るためだという。ヨーロッパの存在感拡大も近年の業界を語る上で欠かせないファクターだ。

これから先更に地上波放送が続くかどうかはわからない。テレビ局側にとってこれはいわばちょっとした実験であり、先につながるかどうかは彼ら次第だと言える。しかし少なくともボクシングにとっては大きな、大きなチャンスだ。そう、特大のクリスマスプレゼントみたいなもんである。

Santa Cruz Is Coming To Town – And To Free TV As Well

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From → コラム

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