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Activityの復権

2012年12月22日

今年のボクシング界の動きを語る上で、Activity、つまり試合の頻度が近年になく注目されていることは見逃せない要素だ。ノニト・ドネアは多くの論者からファイター・オブ・ザ・イヤーとして挙げられているが、その理由は単にパフォーマンスの質が優れていたからだけでなく彼が今年世界戦で4勝をあげたからでもある。また新米王者のレオ・サンタクルスが一気に注目された要因も、彼がわずか7ヶ月で世界戦4勝をマークしたからという点が非常に大きい。二人は来年も似たようなペースでリングに上がることを望んでいる。新しい風の中ではダニー・ガルシアやエイドリアン・ブロナーも今年世界戦3勝を得て知名度を大きく飛躍させた。ボクサーの試合頻度は昔から一貫して減少してきたが、翻って”Activity””Stay busy”は今や業界のバズワードになってきた感がある。

短い試合間隔がボクサーにもたらすメリットはいくつも挙げられる。例えばそれは知名度の向上に直結する。いくら上質な試合を見せても次の試合まで半年も一年も空いたのでは多くの一般ファンの記憶からは薄れてしまう。パッキャオやメイウェザーのようなスーパースター以外の選手達にとっては、なるべく早く次の試合を行うことは商品価値を高める上で何より有効な手段だ。また、試合の決まらない状態が長く続けば練習のモチベーションも落ちてしまうし、オフの期間が長ければ体重は増え体はなまる。シェイプを保つには自分にとって最適の試合間隔をキープするのが最良の方法の一つだし、多くのボクサーにとってそれは一年というような長期ではない。ブランクが空いたボクサーは勘を取り戻すためスパーリングを増やす必要があるが、その結果試合数から不釣り合いなダメージを溜めこむことにも繋がってしまう。スパーリングではファイトマネーはもらえないのだから、そんなことをするぐらいなら安い試合でもいいから本番のリングに上ったほうがよほど得だ。何より実戦に勝る経験はない。戦うことは成長の最大の糧だ。

 

ここで書いたような話は別に言われなくてもボクサーなら誰でも知っている。もっと頻繁に試合がしたいと語る選手の話はそれこそ頻繁に聞くことができる。ではなぜ近年の世界王者は年にせいぜい2回、下手すりゃ1回しか試合をしないのだろうか。彼らが怠け者だから? もちろん違う。

全体的に一流ボクサーの試合数が少ない大きな原因はテレビ局の放送枠が足りないからだ。世界戦、あるいはそれに準じるレベルの試合を組むにはテレビの放映権料がどうしても欠かせない。それより低いレベル、例えば売り出し中のホープにしたってノーテレビではいわゆる好カードを組むのは経済的に非常に辛い。必然的にテレビ局の予算と放送枠に選手のスケジュールが縛られてしまうことになる。実際今より遥かに頻繁にリングに上がっていたオールドタイムチャンピオンの多くは物価の違いを考慮してもかなり安い値段で戦っていた。テレビ放映権料の増大は業界をリッチにしたが、その分テレビへの依存度を深める副作用を産んだわけだ。

しかしそのテレビの放映枠が増えている。アメリカ最大、つまりは世界最大の影響力を持つボクシング放送局であるHBOの年間放送試合数は2010年に34戦、2011年に38戦だったのが2012年に45戦と顕著な増加を見せている。Showtimeは過去の放送カードをまとめていないので実数は不明だが、今年は一放送で三戦四戦とまとめて流すロングラン興行が増えているので、全体としても試合数が増えているのは間違い無いと考えられる。それを支えているのが視聴率の向上であり、HBOは去年より9%、Showtimeは15%程度視聴率が良くなっているのだという。また今年からNBCSNという新しいチャンネルで定期放送が始まったり、ヒスパニック向けのスペイン語テレビ局での放送が数年前から増加中であるなど放送チャンネルの多様化も進行中だ。更にメキシコではテカテビールコロナビールを巻き込んだ大手TV局同士の興行戦争によって一種のボクシングバブルと言われるものまで巻き起こっているし、イギリスではBoxnationというボクシング専門局が昨年開局した。

 

放送枠が増えて困ることは何もない。どんな角度から見てもそれは業界を確実に潤す。そして視聴率を維持するために観客を惹きつける魅力的なボクサーにはより頻繁にオファーが舞い込んでくることになる。これから先数年間は恐らく、長くなりすぎた試合間隔を取り戻す反動が顕著になってくるはずだし、またぜひそうなってほしいものだ。

しかし一方で日本では、地上波深夜のボクシング番組の多くが打ち切られたまま復活しないなど苦しい状況が続いている。井岡、亀田らが高視聴率をマークしているが業界全体を上向かせるには至っていない。幸か不幸か日本では元々の市場規模が小さくて少ないマネーでそれなりに回っている構造があるので、テレビ抜きでもそこそこ好カードは組まれやすい。とはいえもっと良い環境が作られることを当然誰もが望んでいる。業界人の奮闘に期待したい。

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From → コラム

One Comment
  1. 匿名 permalink

    テレビ局をスポンサーに出来れば(もちろんある程度の実力もいるけれども)
    穴王者や王座決定戦で世界チャンピョンの肩書きを得ることは難しくなくなっている。

    2013年現在、格闘技ブーム崩壊の余波で一時的にテレビがついて来てくれるが
    関係者の権威主義やボクシング最強論に陥らず、会場に足を運ぶファンを大事にすることが重要だと。

    テレビで試合を放送しても観客席に人が入っていないのがミエミエであれば
    より一層深刻な状況を晒すだけに繋がりかねない。

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