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ドーソン、マイダナ、亀海……ファイトレビュー

2013年6月10日

亀海喜寛vsヨハン・ペレス

日本中量級に久々に現れた星として長らく大きな期待を背負っていた亀海が、上に進むための関門というべき試合で厳しい結果に直面してしまった。相手のペレスは元WBA暫定Sライト級王者という肩書き持ちだが、タイトル獲得の経緯を見ればいかにもWBAの水増し政策のおこぼれに預かったような価値の低いシロモノ。直近の試合では老兵スティーブ・フォーブスに善戦されチョボチョボの判定勝ちに終わっている。ウェルター級でトップを目指すなら絶対につまづけない相手だ。

しかし終わってみれば内容、結果共にこの階級における世界の壁の厚みを思い知らされることになってしまった。国内鉄壁を誇った亀海のディフェンスが、さほど苦もなく頻繁に破られる。ロングからの右や接近戦でのコンビを幾度となくもらってしまう姿にショックを受けたファンも少なくないのではないか。亀海とてやられっぱなしだったわけではなく、しぶとく前進してボディ打ち中心に良いパンチを浴びせる場面も見られたが、判定をモノにするにはクリーンヒットの物量が足りなさすぎた。完敗と評するより他はない。

亀海は国内・東洋圏では無敵であり、特にディフェンス面では非常に評価が高かった選手だ。相手の動き、パンチをしっかり見切り、その一つ一つを丁寧にシャットアウトしていくことで鉄壁を誇ってきた。しかし上位の選手はそのディフェンスのスピードを超えてくる。だから相手の力量がある一定レベルを超えた途端、突如として対応が間に合わず被弾してしまうという事態が起きる。ここでいうスピードとはハンドスピードはもちろんだが、それ以上に攻防のリズムやテンポの速さ、つまりquicknessとagilityのことだ。中量級以上においてこれが国内レベルと世界レベルとの決定的な差となって現れる。例えばとても速い選手とは呼べないマイダナでさえ、この面での速さにおいてはあらゆる日本のウェルターウェイトより上だ。

今後亀海に新たなチャンスが訪れるのかはわからない。ミドル以下の13階級の中で日本人が唯一獲得していない世界ウェルター級の壁とはこれ程に厚い。ウェルターへの挑戦はまだまだ長い道のりになりそうだ。

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エリスランディ・ララvsアルフレッド・アングロ

予想をはるかに超えた熱い戦いだった。ララの技術の高さはもちろん、そのララをここまで追い詰めたアングロのパワーと馬力もやはり一級品だ。風貌からスタイルまで何もかもが対照的な両者がこれほどがっちり噛みあう試合というのも珍しい。

結果的に勝負を決めたのはアングロの目の負傷だった。といってもよくある腫れなどではなかったようで、精密検査の結果は未発表ながら眼窩底骨折の恐れがあるという。こうなると単に視界が塞がるのではなく、軽く触れられるだけで頭蓋骨を突き抜けるような激痛が走る。そんな状態でプロボクサーのパンチを受ければどうなるか。ストップは全くもって正当なものだ。

長らく不遇をかこってきたララだが、この勝利でWBA暫定王座を獲得。このタイトル自体の値打ちは低いもののララにとっては大きな前進だ。システムが真っ当に働けばメイvsカネロの勝者と対戦できるし、そうならずとも何らかのビッグマッチに進める環境は整った。この日のような試合を見せれば自然とファンも増えていく。後は本人次第だろう。

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マルコス・マイダナvsホセシト・ロペス

絶対に激闘になると言われ本当に激闘になる試合はそれほど多くない。最近だとリオスvsアルバラードが最も期待に応える名勝負になったが、このファイトもそれに劣らないものだ。まさしく真っ向勝負、これぞ拳闘の原点というべき最高のどつき合いを見せてもらった。

そんな中で実はマイダナの技術的成長が大きなポイントだった。誰もが認める殴り屋のマイダナだが、アレキサンダー戦の敗北を経てドネアを育てたことで名高いロベルト・ガルシアの元につくことを決意する。それから約1年、3試合目にしていよいよその成果が如実に現れてきた。例えばジャブ。力のある、それでいてシャープなジャブを2発3発と続けて打つことで相手を下がらせ絶好のポジションを作る。あるいはコンビネーションの精度とバリエーション。あるいはボディワークを活かしたディフェンス。全ての面でボクサーとしてのバランスや完成度がはっきりと向上している。

GBPのリチャード・シェーファーはマイダナとマリナッジvsブロナーの勝者との対決に色気を見せる。特にブロナーvsマイダナは戦前から大きな話題を呼びそうだ。

話が逸れるが、当のマリナッジはこの日もShowtimeの解説席に登場、現役王者とは思えない堂々たる解説力を見せつけた。アメリカでの「解説者マリナッジ」の評価は非常に高く、引退後の進路は決まったも同然。20年も経てば若いファンから「えっ、あの解説のおっちゃん昔チャンピオンだったの?」と驚かれるようになっているだろう。

チャド・ドーソンvsアドニス・スティーブンソン

技術と経験で優る王者有利の声が多いながら挑戦者のパワーに期待する声もあったとはいえ、これほどの劇的な結末になるとは誰も予想できなかったに違いない。KOタイム、なんと1ラウンド76秒。あまりにも唐突な、そして驚愕のノックアウトだった。ヒットの反動で打ったアドニスの体が後ろにズレたのはそれだけ激しい衝撃だったことを示している。試合を通じてドーソンのクリーンヒットは2発、スティーブンソンは3発。こんな数字は滅多に見られるものではない。

選手寿命が大きく伸びて久しいとはいえ、35歳で世界初挑戦・初獲得のスティーブンソンはかなりの遅咲きだ。それもそのはず、若いころは4年間も刑務所で過ごしプロボクサーになったのは29歳。初敗北の後は今はなき名匠マニー・スチュワートに師事し豪快KOを連発、今年の3月には唯一苦杯をなめた相手に痛烈リベンジを飾っている。最初で最後の大勝負と位置づけたこの一戦を地元に持ってくるため、アドニス陣営はHBOや海外テレビの放映権料を全額放棄し王者の取り分にすることで契約を成立させた。まさにチップ全掛けの大博打でロイヤルストレートフラッシュを決めてみせたのだ。

さて一気にスターダムに躍り出たアドニスだが、現役選手として残された時間は恐らく長くはない。それだけにインタビューではホプキンスらの名前を上げ統一戦に意欲を見せた。先が短いからこそ太く派手に生きるつもりなのだろう。この戦慄の強打者がこの先どんな試合を見せるのか楽しみでならない。

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試合も派手だが喜び方も派手な新王者

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4件のコメント
  1. マンテキーヤ permalink


    マリナッジはスペイン語も出来るんですよね
    引退後も安泰ですな

    • マリナッジの引退後も安心ぶりはデラホーヤ以来だと思います(^_^;)

    • KOKO permalink

      マリナッジ、メキシコ系でもないのにスペイン語できるんですか(笑)
      どうやって勉強したのかな・・・・
      確かNY出身だったと思うのですが、スペイン語エリア?で育ったとかいうことでもないと思うんですが・・・
      悪ガキ系キャラなのに、ボクシングも人生も安定志向(笑)

      • マリナッジはイタリア系なので元々イタリア語が話せるようです。で、イタリア語とスペイン語は兄弟みたいなものなので習得は比較的容易なのだとか。
        いずれにせよマリナッジが相当にクレバーなのは確かですね。どうすれば仕事が得られるかよーくわかってますわ。

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