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進撃の巨人 デオンテイ・ワイルダー

2013年8月11日

クリチコ時代がもうすぐ終わろうとしている。兄ビタリは政治家に転身し、あともう一度リングに上がるかどうかさえ定かではない。弟ウラジミールはまだ当分現役だろうが、彼とて37歳であり残された時間はそう長くない。もし誰も彼らを倒すことなく、バトンを受け継ぐ機会が失われたまま両者引退ということになれば、それはヘビー級の歴史が一旦そこで途切れることを意味する。この先どんな素晴らしい王者が出現しても、クリチコズと比較する物差しが存在しない状態では奥歯に物が挟まったような評価になってしまうだろう。次の時代を担うヘビー級は、数年後ではなく今必要とされている。

Deontay2

デオンテイ・ワイルダーが初めてボクシンググローブを拳にはめたのは、彼が20歳の時だった。スポーツの名門アラバマ大学でアメフト、バスケでの活躍を期待されていたデオンテイだが、ちょうどその頃生まれたばかりの娘が難病を患っていたため、故郷に程近い小さなカレッジに転入を決意する。その時新たな人生の糧として選んだのが拳闘の世界だった。何の経験もないワイルダーには、しかし群を抜く身体能力とパワーがあり、その2つの拳には爆弾が秘められていた。わずか2年後彼は2つの全米大会を制し、その翌年には北京五輪スーパーヘビー級銅メダル獲得という快挙を成し遂げる。この時彼のアマチュアキャリアはわずか35戦にすぎなかった。

プロ転向以降、彼はあらゆる対戦相手を倒して倒して倒しまくることになる。5年弱の間に積み重ねた勝利は29。ノックアウトの数は29。近年このような戦績は滅多に見れるものではない。あたかも進撃の巨人が人類を食い散らかすかのように敵を蹴散らしてきたのだ。トレーナーは元金メダリストにしてプロでも世界を獲得したマーク・ブリーランド。彼は自分と体型の似たワイルダーの育成に絶対の自信を持っている。

ワイルダーのゆくところ常に対戦相手のレベルに対する批判がつきまとってきた。噛ませ犬を狩って話題作りをしているだけだという声はいつだって大きかった。だが考えても見てほしい。29人の噛ませ犬を全員残らずノックアウトできるボクサーがどれだけいるかということを。ましてや元世界王者のセルゲイ・リャコビッチを103秒で粉砕した男など今まで一人もいないということを。

ワイルダーのボクシングには、玄人をうならせるような高度な技術や戦術など何もない。ジャブを突く。距離を調節する。右でドカン。以上、それで試合は終わる。ゆえに彼の技術に疑問の声が出るのは当然だ。スタミナやアゴの強さが試されていないのもその通りだ。考えうる弱点、負けパターンなどいくらでもある。完成度という点ではクリチコ兄弟とは比べるのもアホらしい。

しかしそれがどうしたというのか。彼にはパンチがある。彼にはものすごくパンチがある。彼には人類なら誰も耐えられないほどのとにかくとてつもないパンチがある。ヘビー級のボクサーにこれ以上一体何が必要なんだ?

ワイルダーは語る。「僕が叩くと、相手はただ落ちていく……。時々自分でも恐ろしくなるよ」

「リングの外からではわからないことがある。それは僕のスピードだ。目の前で僕と向き合うまではわからないのさ」

その通り、ワイルダーのもう一つの武器は彼の速さだ。速いといっても下の階級のスピードスターのようにあらゆる動作が速いのではない。踏み込んで、ジャブを突く。更に踏み込んで右の大砲を放つ。この一連の動作が圧倒的に速い。そして非常識な長距離から届く。だから相手は、それが来ることなどわかっているのに避けられない。

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つまるところワイルダーは、ある確率で歴史上のあらゆる偉大なヘビーウェイトに勝利できる可能性がある。人はそれを強打者だけの特権、パンチャーズ・チャ ンスと呼ぶ。「一発当たれば」それは予想不利の挑戦者に対し地元テレビの実況が気休めのように使うお決まりの言葉だ。しかしワイルダーに関して言えばそれ は気休めでもおまじないでもなんでもない。本当に、「一発当たれば」それでゲームは変わる。少なくとも僕はこういうヘビー級を待っていた。

この先いよいよワイルダーは本当の試練に直面する。世界獲りを見据えたマッチメークが行われる時が来たからだ。彼がそれを乗り越えられるかどうかは、蓋を開けてみないとわからない。しかしこれだけは言える。進撃の巨人がどこまで進み続けることができるのか、ここから先は絶対に見逃せないということだ。

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2件のコメント
  1. KOKO permalink

    ワイルダーだけですね、ヘビーの希望は・・・
    もうひとりの巨人、白いタイソンは見た目と違って小物感がハンパないですし・・・
    ヘイがブランク、コンディションの問題なければ、攻撃的アウトボクシングでスピードで翻弄するでしょう。

    懐かしい名前、デビッド・トゥアが復帰とかありますが、この人もルイスが相手じゃなければ、今で言えばウラジミールが相手じゃなければ、もしくはクルーザーだったら(背低くても重かったから無理だったでしょうが・・・)チャンピオンになってても全然おかしくない選手だったと思います。

    ヘビー級はエキサイティングな階級じゃない、ある意味最軽量のミニマムのように、層が薄い的な言い方も時としてされるようですが、僕はちょっと違うんではないかと。むしろ唯一の3冠、絶対王者ウラジがいるこのクラスこそ、他の16階級より真の王者が誰かは一目瞭然だし、古き良き時代の価値観に一番近い展開がされているクラスとも言えると思います。
    ワイルダーの攻撃力、スピード、そしてウラジの強さの拠り所となっているサイズという面において、全く見劣りしない(というか若干デカい?リーチも上?)ということ、KO率100%というハッタリの効いた戦績・・・・・・再びヘビー級にブラックアメリカンボクサーの時代を築けるか?
    ウラジミールVSワイルダー、楽しみに待ちたいですね。
    ・・・ところで少し前に起こした暴行事件はクリアになったのでしょうかね?そのへんのゴタゴタはゴメンです・・・

    • 例の事件に関しては続報もありませんし、多分示談か何かで内々に処理されたんじゃないかなあと思っています。
      体格の話、恐らく身長はややウラジ、リーチはワイルダーが上なんでは?まあ試合では体格差は気にならないでしょう。とにかくこの二人の激突が見たいです。

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