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ステバーンvsワイルダー決着!

2015年1月18日

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20世紀、ヘビー級ボクシングの歴史はアメリカンヘビーウェイトの歴史だった。ジョー・ルイス、ロッキー・マルシアノ、フロイド・パターソン、ソニー・リストン、モハメド・アリ、ジョー・フレイジャー、ジョージ・フォアマン、ラリー・ホームズ、マイク・タイソン、イベンダー・ホリフィールド……。しかし2007年にシャノン・ブリッグスがWBO王座を失って以来、星条旗を携えた男達は4つあるヘビー級チャンピオンベルトの1つにさえ辿り着くことが出来ていない。アラバマ州の巨人、元五輪銅メダリストにして32戦32勝32KOのウルトラパンチャー、デオンテイ・ワイルダーはその惨めな空白を終わらせようとしていた。

アラバマ州にはヘビー級の歴史がある。ルイスとホリフィールドの出生地だからだ。ただしワイルダーが勝てばボクサーとしてこの地で育った最初のヘビー級王者ということになるそうだ。奇しくもザ・グレーテスト・アリの誕生日と同じ1月17日、WBCヘビー級タイトルマッチのゴングが鳴った。

結末の形はほとんど誰も予想していないものだった。「ジャッジは寝ていてもいい」はずの試合がまさかの判定決着。しかし勝者がアメリカのニューホープであることは明白だった。スコアは118-109、119-108、120-107。フルマークはちとおかしいが、いずれにせよワイルダーの完勝には違いない。試合後のインタビューでは新王者の顔はいたって綺麗なままだった。

この試合、まずモノを言ったのは挑戦者のジャブだ。もともとジャブの威力、長さには定評があったワイルダーだが、今夜はキャリア断トツ最強の相手を前にして手数、精度の面でも非常に優れたジャバーであることを証明してみせた。この成長にはかつてプロ・アマ両方で頂点に登ったマーク・ブリーランドによる長年の指導の功績が大きかったはずだ。ブリーランドもワイルダーと同様、長身で細身のパンチャースタイルだった。

Bermane Stiverne v Deontay Wilder

ステバーンは本来、現役ヘビー級で最もヘッドスリップの巧みなボクサーの一人。並のジャブならば最小限の動きですり抜け、カウンターの一撃で大きなダメージを与える能力を持っている。それがこの日は序盤からワイルダーのジャブが顔面を捉え続けた。距離、スピード、タイミングのどれかあるいは全てがハイチ人王者の想定を明らかに超えていた。ステバーンはついに最後までこのジャブに対する有効な打開策を見つけていない。

ジャブが当たれば当然その次は右の主砲だ。ワイルダーの右ストレートが怪物的な破壊力を持っていることは誰もが認めている。しかし世の中にはそれを食らってなお打ち返してくる男がいる。その時彼には何が出来るのか? 今日のワイルダーが回答した最も大きな疑問がそれだった。彼は反撃を躱し、捌き、時には大きくバックステップを踏み、決して主導権を手放さなかった。「防御技術」と「ボクシング頭脳」、これまで計ることが不可能だった2つの能力を備えていることを新王者は証明した。

皆知っていることだが、ワイルダーの主砲はほぼ右ストレート一本だ。ただし数は少ないながらも命中していた左フックは相手のフットワーク、ヘッドムーブの自由を制限していたし、時々放った右アッパーは空振りでも前進をためらわせるだけの凄みがあった。ガードを固めた時は意外なほど食わないし、ロープ際からの逃げ足も速い。見た目よりずっと彼は技術を習得している。だが小器用にまとまるよりもむしろ最大の武器であるパワーを活かすためにスキルを伸ばすという発想は恐らく正解だろう。

bermane-stiverne-vs-deontay-wilder-04-photo-by-naoki-fukuda

CompuBoxによればこの日ワイルダーは621発のパンチを打ち227発を命中させた。ステバーンは的中率こそさほど変わらないものの手数は約半分の327発のみ。その内のいくつかは挑戦者の顔面を揺らしたが試合の流れを変えるには至らず、かえってある程度のタフネスを証明したワイルダーの評価を高める結果になった。

一方で最もはっきりと見えた課題はスタミナだろう。なにしろ過去32戦のキャリアで一度も4ラウンドを超えたことのない男だ。長引けば失速する事はわかりきっていたが、この部分はまだまだ鍛える必要がある。ただ逆に言えばこのキャリアでこの相手に、疲れた時も明白な劣勢に陥ることなく安定したボクシングを完遂できたというのは非常に大きい。この経験はプロモーターから支払われた100万ドルよりも遥かに大きな財産となるに違いない。

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新王者は語る。「次はタイソン・フューリーと戦いたい。そしてクリチコだ。今年3、4戦はやりたいね」

もし英国で大きな人気を誇るフューリーとの無敗対決が実現すれば、両者合わせてファイトマネー191万ドルに過ぎなかった今回とは比べ物にならないほどのスーパービッグマッチになるだろう。巨人対決という点でも興味は尽きない。だがそれに勝ってもなおヘビー級の真の王者はアメリカではなくウクライナにいる。

今この時点のワイルダーではウラディミール・クリチコには勝てない。それは恐らく間違いない。だが彼の最大の強みは未だ成長中ということだ。ステバーンはメタルキング級の経験値を新王者に与えた。デオンテイ・ワイルダーはまだまだ強くなれる。

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2件のコメント
  1. 匿名 permalink

    史上最高のジャバー(アリ以上の!)ラリーホームズはリングサイドで何を思ったのか、気になりますね

    • 今のところホームズのコメントは流れていないようですが、興味深いですねえ。

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