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レビュー マリナッジvsブローナー

2013年6月23日

当ブログの勝敗予想アンケート結果はブローナー111票(KO82、判定29)、マリナッジ39票(KO11、判定28)となりました。たくさんのご投票ありがとうございます。

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人によって見方が大きく分かれる試合になったので、まずは僕の考えを明らかにしておいたほうが良いだろう。ブローナーが完勝した。判定がスプリットになって驚いたぐらいだ、というのが率直な感想だ。

ボクシング興行での新記録となる1万1461人が詰めかけたブルックリンのバークレイ・センター。退屈なセミファイナルを終え、注目のメインイベントは両者が自分の得意スタイルをそのまま通そうとする展開になった。マリナッジはひたすらビジーに手数を出し続け、ブローナーはほとんどフットワークを使わず正面から相手の攻撃を受け止めてクリーンヒットを奪う。立ち上がりはどちらの優勢とも言えず、ただしブローナーがフィジカルで全く劣っていないことが印象的だった。体格でも五分かそれ以上に見え、パワーでは明白に上。そしてマリナッジのパンチに対しほとんど警戒を見せずがっつり受けて立っているのがいっそう驚きだった。もちろんマリナッジは弱打者として名が通っているが、それにしても自信を持ち過ぎではないか? しかしそんな懸念は次第に薄れていく。

ラウンドが進むにつれブローナーのパワーショットが王者の顔面を跳ね上げる機会が増えていく。離れていてもジャブが強く、密着すればアッパー、ショートフックと死角が無い。マリナッジは相変わらず手を出し続けていたが、実際に与えたダメージでは大差がついていたのでは。終盤はマリナッジのタフネスとスタミナにうならされたが、趨勢をひっくり返すようなものではなかった。

オフィシャルスコアは117-111、115-113でブローナー、115-113でマリナッジ。地元ブルックリンの大観衆はマリナッジ支持のスコアに大歓声を送ったが、映像観戦者の一人としては挑戦者勝利は揺るがなかったと思う。クリーンヒットの質、与えたダメージが全く違った。

スタッツを見てみよう。ブローナーは524発中246発をヒット、マリナッジは843発中214発を命中させた。見ての通り手数では前王者の完勝だが、ヒット数では新王者がリードしている。しかも一発あたりの威力と深さではブローナーが断然上だ。格闘技としてのボクシングを支配していたのはほぼ一貫してブローナーだったと思う。

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結果として大激闘、名勝負のたぐいではなかったけど、マニア的には充分に楽しめる一戦だった。マリナッジの執念は見事だし、それを凌駕してみせたブローナーのスキルとフィジカルには目を見開いた。例えば到底まともなパンチなど打てなさそうな密着状態で鋭いアッパーカットを差し込み顎を跳ね上げる場面、高速連打をブロックしながら一瞬の隙間にカウンターを差し込む場面などはスター候補の面目躍如と言えよう。

そしてそれ以上に感心したのがブローナーの打たれ強さ、あるいは頑丈さだったかもしれない。とにかくビクともしないのだ。

ブローナーにはスタイルの元ネタであるメイウェザーに比べてディフェンスが甘い、被弾率が高すぎるという批判が常にある。しかし彼のキャリアの中ではっきり効かされたことはほとんどない。とにかく食っても平然としているのだ。顔面ならば柔らかく受け流すことでダメージを軽減できるのは当然だが、脇腹にまともに貰っておきながら微動だにしない場面が多々見られるのは不思議な現象だ。我慢強いとかよく鍛えているとかいうよりも根本的に頑丈なのだろう。とかく天才タイプにはスキル偏重で打たれて脆い選手が目立つが、ブローナーには根性ファイターとしてもやっていけそうなフィジカルがある。それが一気にウェルターまで上げても通用した大きな要因ではないだろうか。

ビッグマウスに迷いがないブローナーは「ポーリーは俺を殴れなかった。シャドーボクシングをしていただけだ」とまで吹聴する。とはいえ今日のブローナーの出来が満点だったとはとても言えない。ライト級までならとっくにフィニッシュできていたであろう展開で最後まで抵抗を許したのは階級差がそのまま反映された結果だろう。上の階級では以前と同じ事をしていてもスタミナの消耗量が違うということも、やや失速気味だった今日の終盤で学んだはずだ。

もしもブローナーが本気でウェルター級でやっていくのなら、余裕ぶってないで本物のウェルター級の肉体を作らなければならない。次戦はマイダナなんていう噂もあるが、いくら頑丈でも今の体とやり方でマイダナの豪打をまともに食らうわけにはいかないだろう。またフットワークをほとんど使わず正面から歩いて相手に接近する戦法もフィジカルの優位があって初めて成り立つやり方と言える。恐らく近い将来それでは通用しない相手と対面することになる。その時この未完の大器がどんなボクシングを見せるのか、興味は尽きない。

4件のコメント
  1. permalink

    やはりブローナー物が違いますね。何より練習の賜物でしょう。
    判定はビックリしました。7~8くらいブローナーが取っているようにも見えました。
    1人のジャージは謎ですね?手数だけなのでしょうか?
    ブローナーはとりあえずスーパーライトで4階級制覇とともに、メガマッチを期待したいです。
    スーパーライトならば、KO量産できそうです。

    • マリナッジにつけたジャッジは手数重視に加えて、ブローナーの戦い方を「横着している」とみなして嫌ったんではと考えます。ジャッジの心象を害したというやつではないでしょうか。
      スーパーライトは今のブローナーにとってベストに最も近い階級でしょうね。ただし相手のレベルが高いので楽な戦いにはならないと思いますが。もしスーパーライトで快進撃ができるようならスーパースター待ったなしでしょう。

  2. (。-`ω´-)ンー permalink

    ブラッドリー、アレキサンダー、カーン、マイダナ、ガルシア、ジュダーあたりと戦ったらナチュラルに負けそうな気がします。
    マルケスorパックと闘るのはまだまだ尚早なので、Sライトでそれなりのパフォーマンスを見せてから、ビッグマッチに臨んでくれると真価がはっきりするのではないですかね。
    まだ23なんでフィジカルに比べて弱いオツムをもう少し鍛えると、スタイルも進化してくれそうですがwww
    リングで試合直後に負けた相手に『テメーは負けたんだよ♪』なんてトラッシュトークしてるボクサーは久々に見ましたw
    その後のインタビューでのマリナッジの負け惜しみも面白かったですw
    ペチペチジャブ当てて真後ろに下がる意味不明なポイントアウトスタイルは哀愁が漂いました♪

    • ウェルターでのブローナーはまだまだ新入り。真価が試されるのはこれからなんでしょうね。
      スタイルの進化というか変化は確実に訪れると思いますが、それがどんなものになるかは純粋に楽しみです。

zeeko3 への返信 コメントをキャンセル