マイク・タイソン プロモーターデビュー!!
あのアイアン・マイクが帰ってくる。もちろん御年47歳のタイソン(B-HOPより1歳若いけど)が選手としてリングに立つわけではない。今度はプロモーターとして、ボクシングの世界に帰って来るのだ。
タイソンといえば数々のトラブルや困難を経て「俺はボクシングを憎んでいる」とまで公言していた男。当然ファンの間には、もう二度とあの鉄人がボクシングに関わることはないのではという思いがあった。彼にどんな心境の変化があったのかはわからない。今後インタビューなどで明かされることがあるかもしれないが、とにかく今はあの伝説の男が帰って来るという事実を素直に喜びたい気持ちだ。
2005年を最後にリングを去った後も度々逮捕されるなど波乱の人生を送っていたタイソンに転機が訪れたのは昨年8月のこと。黒人映画監督として名高いスパイク・リーとのタッグでニューヨーク・ブロードウェイでのトークショーを開始したのだ。自身の人生を赤裸々に語ったこのトークショーは大きな評判を呼び、今年2月からは3ヶ月間に渡る全米36都市でのトークショー・ツアー(公式サイト)を展開した。あるいはこのイベントが、長い間暗闇をさまよっていたタイソンに何らかの光明を垣間見せたのかもしれない。
Iron Mike Productionsの誕生
アメリカ南東部、カリブ海に面した地にフロリダ州がある。そのフロリダに2年前新しいボクシング・プロモーション会社が立ち上がった。Acquinity Sportsという名のその会社はドミニカ、キューバなどカリブの新鋭たちと相次いで契約し、その一人アルヘニス・メンデスがIBFスーパーフェザー級王座を獲得するなど快調な離陸に成功していた。この会社の特色は米国式プロモーターというよりむしろ日本のジム制度に似た独特の運営スタイルにある。Acquinity Sportsに所属するボクサー達は皆同じジムで共に汗を流す練習仲間でもあるのだ。タイソンが彼らの練習風景を見た時、彼は恩師カス・ダマトがいた頃の自分自身を思い出したのだという。
Acquinity SportsのCEO、ギャリー・ジョナスには悩みがあった。急速に選手層を拡大してきた彼らの会社だが、それゆえテレビ局との交渉が追いつかず充分な数の興行を打ちづらくなってきていたのだ。「我々は注目を集める必要があった。マイクこそ完璧な人材だったんだ」
ジョナスは自らの会社にタイソンを招き入れ、それどころか社名まで差し出した。Iron Mike Productions。それが新しい会社の名前だ。(公式サイト)
そういうわけで、タイソンはプロモーターになったとはいっても自分で会社を立ち上げたわけではない。あくまで既存のプロモーション会社に乗っかった形だ。しかしタイソンは単なる客寄せ看板で終わるのではなく、積極的にこのビジネスに関わっていく見込みらしい。
アイアン・マイク・プロダクションズの旗揚げ興行は8月23日ニューヨークにて開催される。メインイベントは今やチームの顔であるアルヘニス・メンデスの初防衛戦、セミは期待の新鋭クラウディオ・マレーロのWBAフェザー級暫定王座決定戦だ。(※彼らについては過去記事参照) この興行はスポーツチャンネルESPNのボクシング番組フライデーファイトナイトにて生中継される予定で、新会社の第一弾興行としては中々の大型イベントと言えるだろう。
この先“プロモーター・タイソン”の将来に何が待っているのかは誰も知らない。だけどあのタイソンがもう一度ボクシングの世界に帰って来る、それだけで嬉しくなってしまう人は僕だけではないだろう。かつてドン・キングら業界の大物たちに生き血を吸われたタイソンがプロモーターとして何をなすのか、楽しみに待ちたい。