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敗れてなお偉大なり コヴァレフvsホプキンス

2014年11月9日

セルゲイ・コヴァレフvsバーナード・ホプキンス

現代の生ける伝説バーナード・ホプキンスがついに完敗を喫した。過去に6度負けているホプキンスだが、再三傷めつけられ最終回ではストップ寸前にま で追い込まれた末でのフルマーク判定負けという結末はこれまでのどんな黒星とも比較しようがない。“クラッシャー”コヴァレフは、妖怪バーナード・ホプキンスを 初めてクラッシュした男としてますます羽ばたいていくだろう。

Sergey-Kovalev-vs-Bernard-Hopkins-3-fukuda

この試合でコヴァレフは桁外れのパワーやフィジカルの強さだけでなくボクサー としてのスキル、頭脳の面でも一流であることを証明してみせた。常時プレッシャーをかけながら決して深追いしたり体ごと突っ込んで行ったりはせず、自分の パンチが最大の効果を発揮する距離を保ちながら強打をコネクトし続けるのは容易いことではない。まして他ならぬB-HOP相手にそれを貫徹した男など今ま でいなかった。セミファイナルのアブレグには欠けていたもの、隙のない重厚かつ巧みな前進が達人の戦力を削り続けた。特にこの試合印象的だったのは重く的確なジャブ、ボディージャブによる地道な組み立てと接近戦における半歩単位の微小なバックステップだ。打ち終わったらすぐに少し下り、都合の良い距離と体勢を確保してまた打つ。言葉にすれば簡単な事だが、それを強打の連打と併せて12ラウンド実行し続けるのは大変なこと。またここまでのキャリアで9ラウンドを超えたこのないコヴァレフは未知数だったスタミナも証明した。まさしく本物の、超一流の強豪として名乗りを上げたロシアの怪物が今後のライトヘビー級に君臨していくことは間違いない。同じロシアのアーサー・ベテルビエフとの怪獣大決戦なんて最高に面白そうだ。

そして忘れてはならない。B-HOPは、49歳なのだ。あと2ヶ月で50歳になる男がこの怪物と真っ向対峙し、それどころか最後まで逆転勝利を狙いカウンターのチャンスを探り倒れることを拒否し続けた。命中したいくつかのパンチは素晴らしいもので、特に10R後半に打ち抜いた右オーバーハンドと左フックは芸術的だった。最終的なスタッツではコヴァレフ585発中166発ヒットに対しホプキンスのヒットは195発中65発に過ぎずまさに手数とヒット数両面で圧倒されたわけだが、こと的中率では28%に対し33%とやや老雄が上回っている。彼がいかに辛抱強く巧打を狙い続けたかの証明だろう。それにしても大半の世界ランカーが3Rともたなかったあのクラッシャーパンチをあれだけ食らって12Rまで戦い続けるとはつくづく偉大でしかない。終盤はほとんどの人々がホプキンスに肩入れして見ていたのではないだろうか? 最強のヒールだった男はいつの間にかヒーローになっていた。

プロになって26年、IBFミドル級王者になってから19年、トリニダードに勝ちスターダムに登ってから13年。もうこの先二度とこんな桁外れの長命ボクサーは現れないかもしれない。落ち込んだそぶりを見せない試合後のホプキンスはこれで引退する確率は「50-50」だと語った。コヴァレフは敗者に最大限の経緯を表し、「スティーブンソンになら勝てる」と称えた。この先B-HOPがどんな道を選ぼうとも、誰にも文句があろうはずがない。彼は今でも一流のファイターで、永遠のレジェンドだ。

sergey-kovalev-vs-bernard-hopkins-03-photo-by-naoki-fukuda

 

サダム・アリvsルイス・カルロス・アブレグ

初回からブーイングが飛び出す凡戦として始まり、終わってみればサダム・アリの鮮烈な出世ショー。セミの好カードは予想外の結末と内容だった。アリは北京五輪出場後プロ転向し、紆余曲折を経てゆっくりとしたキャリアを積んできた無敗ホープ。最近流行りのスピード出世型アマエリートとは対極のキャリアだが、選手によって正しい育成法はまちまちなのだということがこの日のパフォーマンスを見ればよくわかる。大柄な体格と強打を誇る、いかにもなアルゼンチンパワーファイター型のアブレグに対し、アリはスピードを活かしてアウトボクシングで対抗。少々大げさなほど距離を取るなど敵と観客双方にフラストレーションを溜めさせる戦いぶりだったが、ラウンドを重ねるほど徐々に試合をコントロール。そして6ラウンドには雑に入ってきたアブレグに対しお見事な右カウンターを決めダウンをゲットした。これで試合の趨勢はほぼ決まり、以降アブレグの反撃を捌ききったアリが9Rに再び右でダウンを奪うと、再開後の追撃でレフェリーが試合をストップ。過去37戦で唯一の負けはティモシー・ブラッドリー相手の判定負けというアブレグにとってTKO負けはもちろん初めてのこと。試合後アブレグは「アリは速かったがストップも早かった」と不満を述べたが、僕の目には極めて適切なタイミングだったと思う。

決して世界レベルの強打者ではないアリだが、スピードとタイミングによるこの試合のKO劇はお見事。足が速い上にボディワークもブロッキングも丁寧で、攻防ともにクイックかつバリエーション豊か。負けないボクシングに徹すれば並の選手では攻略は難しそうだ。一方のアブレグは足を止めての打ち合いや中間距離での正直な攻防では強くとも、逃げる相手を追い込むスキルに穴があった。頭を振らずガードを上げず正面から入っていけばカウンターを取られるのは当然のこと。特に最初のダウンは悪い例として教科書に載せたくなるような場面だった。

ali-abregu (8)

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6件のコメント
  1. みっちー permalink

    コバレフvsベテルビエフが観てみたいっす!!
    プロに慣れればベテルビエフが怪物に感じますが…

    • ベテルビエフに関しては、もう2,3戦実績のある相手との対戦が見てみたいところです。来年後半には夢のカードとして挙げられているかもしれませんね。

  2. コバレフの強さ・うまさも目立ちましたが、ホプキンスがコバレフを必要以上に攻め込ませなかったのも事実ですね。
    このままコバレフvsスティーブンソンの頂上決戦になだれ込んでもいいですが、スティーブンソンはホプキンスにどういう戦いを見せるのかな?という興味もありますね。
    ホプキンスというベテランの域を超えたベテランを相手に戦った経験値がコバレフにだけあるのは不公平かなとも。スティーブンソンもホプキンスのボクシングを直に味わって自分の血肉としたうえでコバレフとの決戦が実現すれば、より面白い統一戦が見られるんじゃないかなと考えます

  3. ボロカブ permalink

    ホプキンスは、そろそろ辞めても良い気がします。年をいっても普通のチャンピオンよりは、強い事は証明済みですし・・・階級ナンバーワンに勝つのは無理 過去にカルサゲやドーソンにも負けています。もはやレジェンドだし、プロモーションの仕事に専念する時期だと思うけど

    • はたしてホプキンスがどんな選択をするのか、どう転んでもしばらくは話題には事欠かないでしょうね。

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